Monday, August 8, 2011

コメ先物:価格安定に時間も 需給逼迫の思惑先行


コメ先物:価格安定に時間も 需給逼迫の思惑先行
Aug 8th 2011, 13:29
コメ先物が72年ぶりに上場し、取引開始前に「手振り」による取引を再現する関西商品取引所の職員たち=大阪市西区で2011年8月8日午前8時47分、竹内紀臣撮影
コメ先物が72年ぶりに上場し、取引開始前に「手振り」による取引を再現する関西商品取引所の職員たち=大阪市西区で2011年8月8日午前8時47分、竹内紀臣撮影
東京穀物商品取引所(東京)と関西商品取引所(大阪)で8日、72年ぶりのコメ先物取引が始まったが、東京では買いが殺到して値幅制限の上限を超え、売買が成立しないまま終了する波乱の幕開けとなった。東日本大震災と福島第1原発事故、新潟・福島豪雨などでコメの生産量が減り需給が逼迫(ひっぱく)するとの思惑が背景だ。先行きには不透明感が強く、取引価格の安定には時間がかかりそうだ。
この日は東京、大阪とも買いが先行。特に東京は関東産コシヒカリの気配値が基準値の60キロ当たり1万3500円を大きく上回り、値幅制限を超えたため取引を一時中断。その後も売買が成立しないまま日中の取引を終えた。取引方法の違う大阪市場は北陸産コシヒカリの11月決済分(11月きり)の初値が1万4320円と高値でスタート。最後は1万4620円で引けた。
初日の高値は震災や豪雨で今年産米の生産減が予想されることが要因。農水省は放射性物質に汚染された農地の作付け制限で5万トン、津波被害で9万トンの減少を見込む。被災地の生産枠を他の地域に移すなどして12万トンはカバーしたが、収穫後の放射能検査によってはコメの出荷制限が発動される可能性があるほか、新潟・福島豪雨の影響も未知数だ。
極端な値動きは市場参加者の層の薄さも一因だ。コメ現物の最大の売り手であるJA(農協)グループは「主食をマネーゲームの具にすべきでない」として先物取引への参加を見送っている。買い手側も「今は投資家による思惑買いが先行しており、リスクが大きい」(関東の大手コメ卸)と慎重な構えを見せている。
また、コメの年間消費量は過去10年間で90万トン以上減って約800万トン。今後、原発事故による風評被害でコメ離れに拍車がかかる恐れがある。「根本的にはコメの過剰基調が続いており、本当に米価が上がるのか予測が難しい」(コメ情報調査会社の米穀データバンク)との声もある。業者間取引では、放射能汚染の心配がない古米が人気を呼ぶ現象も起きている。
江戸時代からの歴史を持つコメ先物取引は戦時経済統制が強まった1939年に廃止されたが、農水省が両取引所の申請を先月認可。2年間の試験上場を経て問題がなければ本上場が認められる。今後は生産者や実需者の積極的な参加で取引に厚みを増すことができるかが安定的な価格形成の鍵になりそうだ。【行友弥、南敦子】

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